不思議な宿屋

あらすじ

深い森の奥、奇妙にそこだけ丸く切り開かれた場所に一軒の宿屋があった。見上げるほど大きな宿は周囲を森で囲まれ、宿というよりも塔や城と説明された方が理解できるような外観だった。男は気がつくとその森を抜けその宿屋にたどり着いていた。何もかもが異様で不思議な空間。記憶の一部を失っていた男はそこで宿の女将と出会い、自身を「天下番才(あましたばんさい)」と名乗ることとなる。宿泊者は誰もが偽名を名乗り、そして誰もが自分の意思でこの宿屋にやって来たこと、それぞれに心に深い傷を負っていることを聞かされた番才は、案内された部屋の襖で仕切られた隣室に泊まる「雨ノ雫(あめのしずく)」をはじめさまざまな宿泊者と出会っていく。人間や妖怪だけでなく、さまざまな次元や時代からやって来た宿泊者たち。そんな宿泊者たちの苦悩や葛藤、そして自らも心の傷を負っているはずの宿泊者たちが互いに心の傷を埋め合っていく。

「いらっしゃい」

新たな宿泊者が宿屋にやって来て・・・

『黎明編』
第一話〜十話
記憶の一部を失った男は、森の奥の宿屋にたどり着く
同じように心に傷を負った宿泊者たちとの出会い
男は自らを「天下番才」と名乗るようになる
これは不思議な不思議な宿屋の話
この物語はあなたの“想像力”を刺激する
『雷鼠編』
第十一話〜二十一話
雨が引き寄せた新たな出会い
少年はなぜ自らを傷つけるのだろうか
忘れられない御伽噺と忘れたい記憶
欲望の先に待つ衝撃的な結末とは・・・
あなただったらどうしますか?
『利他編』
第二十二話〜三十八・五話
誰もが踏み外してしまう道がある
“償い”とは一体なんなのだろうか
心の葛藤はやがて大きく動き出す
紡ぐ言葉の良し悪しとは裏腹に
ぼくたちにできることはあるのだろうか
『Same Page』
詞・曲:Takeshi
紡ぐ言葉は記憶を映し
奏でる曲がそこに色を加える
込めた想いは大きく羽ばたき
やがて誰かの心の中でその羽を休めるのだろう
あなたの目にはどんな物語が見えますか?

著者
前田亮

〜不思議な宿屋とは〜

すべては一枚の抽象画から始まった・・・

作品を募集し、その作品を物語に登場させるというこれまで見たことも読んだこともないまったく新しい書き方で紡がれていく物語。
それが「不思議な宿屋」という物語です。
それぞれの作品に込められた想いがぼくの想像力と合わさって物語の一部として登場する。“自分の作品が物語になる”というのは、子供の頃に誰もが思い描いていたあの夢がたくさん詰まった空想を形にするようなそんな体験と似ているのではないかなと思います。

これまでに行った二度の作品募集にて合計三十作品を超える数の作品が集まり、現在までにそのうちの十六作品が物語に登場しています。
物語はこれまでに『黎明編』『雷鼠編』『利他編』そして現最新シリーズ『仏蘭編』と四つのシリーズに跨り、七十話を超える物語を紡いできました。この「不思議な宿屋」という物語には基本的な世界観や設定しかなく、あとの物語に登場するキャラクターや場所のほとんどが一般公募にて募集した作品を登場させることで成り立っています。

この前代未聞の物語は作品の数だけ想いや設定が存在する。言ってしまうと“複数人で紡いでいる物語”です。著者であるぼくの思いに偏る事もなく、だからといって世の中に迎合することもない、まさに“不思議な物語”と言える作品だと思います。

物語はまだまだ続きます。
まだ登場していない作品たちもぼくの中ではすでに物語の一部として存在していて、新たな想いが新たな物語を生み出すことでしょう。
あなたの作品との出会いが物語に彩を加え、あなたが作品に込めた想いがより多くの読者の心に響くかもしれない。

ぼくたちはこれからも新たな仲間と作品を常に待ち望んでいます。その出会いが無限の可能性を生み出し、この物語と活動はさらに面白くなっていくに違いない。
“想像力”とは、人間の持つ最大の能力です。
一緒に不思議でワクワクする体験をしませんか?